角田光代「森に眠る魚」

映画・音楽・エンタメ

久々に本を読みました。アメトーークの「読書芸人」でオードリー若林さんがオススメしていた角田光代 著「森に眠る魚」です。

5人のママ友の歯車が狂っていく話です。とてもリアルで恐ろしくなるお話でした。私はパパ側ですが、実際にママの方々が読むとどう感じるのでしょうか。眠れなくなるかもしれません。

90年代末の閉塞感

舞台は「ノストラダムスの大予言」などがあったころの90年代末です。携帯電話はあるがSNSはまだ無く、ママ友のコミュニケーション手段は電話か直接会うのが基本です。いつでも誰とでも常時つながっている気がする2017年の現在とは様相が違います。今だったら身の回りに気の合わない人たちがいても別のコミュニティを作ることが容易だったり、自分のある種の「ポジション」を比較できる対象がネット上にいくらでもあったりする世界とは異なり、近くのママ友と関係を築くことがその人にとっての世界の大半を占めるような時代感があります。そんな中で、少しの価値観のズレ、コミュニケーションのズレが次第に大きな亀裂へと・・・

登場人物が切り替わることで見えてくる世界の相違

小説というものを読むのが久々だったのですが、映像には無い面白さを感じました。それは出てくる登場人物の主観で世界が描写されていくことで読み手はその人が見えている世界を脳内に描写していくのですが、人物が切り替わるとその世界の見え方にズレが生じてくるということです。映像にしてしまうとある程度、客観的にイメージが固定されてしまうところも、登場人物の主観で描写される世界がゆらぎを生み出し、5人のママ友の視点が次々に切り替わることで人物が多面的に描かれていきます。

茹だるような夏の描写が印象的

物語は何年も経過していき、様々な季節が出てきますが、特に夏の描写が印象的でした。夏の強い日差しで景色が白く飛び、輪郭がゆらいでいく様がママ友たちの精神が崩れていく様と重なるかのようでした。

登場人物はそれぞれに個性がありますが、どの人物もそう遠くない身近にいそうな人物ばかりに感じられました。誰もがちょっとしたコミュニケーションの行き違いで歯車が狂って転落していく可能性があるのだと感じさせるお話でした。

という内容なので、ママの友達に一番オススメするべきか、それともリアルすぎてオススメしないべきか、ちょっと迷っています。

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